それで悪いか |
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最後は、2008年シーズンこれまでの流れを概略で。
2006年まで、フェラーリといえば皇帝ミハエル・シューマッハ。 智将ロス・ブラウンをチーム監督に、小憎らしいほど強い、ミスのないチームでした。 (もちろん中には失敗した年もありますが) そして、ある意味、フェラーリといえば絶対エース主義のチーム。 シューマッハは王様。作戦もタイヤもテストもマシンも、何から何までシューマッハ第一主義。 チームメイトはその手先。 チャンピオンシップが絡めば、いつでもどこでもエースシューマッハに道を譲るのがフェラーリのNO2の勤めでした。 (F1ではあからさまなチームオーダー(順位入れ替え)は禁止されてます。)(;´Д`) そんな赤い帝国も、シューマッハの引退で瓦解。 ロス・ブラウンは、不振ホンダのチーム監督へ。 シューマッハ時代をつくった立役者は、次の世代へと引き継ぎました。 その次の世代ってのが、ちょっと優柔不断なイタリアンズ!!!! さて、2007年、 シューマッハの代わりに跳ね馬(フェラーリの愛称)の騎士になったのは、 元マクラーレンのキミ・ライコネン。 この人は、それまで、速さはありながら「ガラスのマクラーレン」といわれるほどよく壊れるマシンを駆って、チャンピオンシップを戦ってきた男。 ようやく壊れないマシンに乗って、いよいよチャンピオンシップに臨みました。 チームメイトは、シューマッハの晩年最後のNO2を勤めたフェリペ・マッサ。 でも彼も、我こそはエース!とキミにライバル心を燃やします。 そして、長年キミ体勢だったマクラーレンが次に選んだエースは、 シューマッハの引退を早めたとも言われる、最年少チャンピオン、フェルナンド・アロンソ。 賃金面でもチームの未来的にも不満があった、里親ルノー(アロンソはルノーの育成ドライバーでもある)を離れ、新しいキャリアの確率に、落ち目のマクラーレン建て直しに乗り出します。 マシン開発でも優れた腕を誇るアロンソ。 さっそくシーズンオフのテストから、技術的にも献身的にチームに貢献しました。 ところが、 そこに思わぬ落とし穴が。 マクラーレンには、それまで、ほんの幼い頃から手塩にかけて育ててきた、 ルイス・ハミルトンという掌中の玉があったのです。 F1の登竜門といわれるGP2の二代目チャンピオン。 速さドライビングテクでは、すでに類まれな実力を示して 頭角を現していた若手天才ドライバー。 あのシューマッハがわざわざ声をかけに行ったほどです。 そもそも、マクラーレンのチーム代表ロン・デニスは、 このルイスの帝王教育のために、元チャンピオンのアロンソを連れてきたといっても過言ではなかったのです。 そうとは知らないアロンソ、 新人ハミルトンのいきなりのデビューに、最初はせっせと マシンセッティングやなにやら親切に教えてあげます。 ですが! いきなりデビュー戦で表彰台をゲットして以来、 ハミルトンは次々とレースで結果を残し始めます。 新人にして、連続表彰台9戦!!!(もちろんF1新記録) うち2戦では優勝!! しかも、あろことか、アロンソを差し置いて、チャンピオンシップのトップに躍り出てしまうという快挙。 このルイスのありえない新人ぶりに、だんだん色をなくしたのが元王者アロンソでした。 当然自分に対して作戦の優先権を主張するアロンソ。 それに対し、マスコミを利用して、 「自分はNO2だからアロンソのサポートをしなくてはならず優勝できない」とコメントするハミルトン。 イギリスVSスペインで、それぞれのドライバーを擁護するマスコミ合戦にも火がつきました。 しかもチームマクラーレンは、もともと、2人のドライバーに優劣をつけず、 自由に戦わせることを信条としたチーム。 そもそもアロンソの期待するようなサポートをするようなチームではなかったのです。 (アロンソはフェラーリに行くべきでした) チーム批判をくりかえすアロンソに対し、 チームの秘蔵っ子にして優等生発言のハミルトン。 チームの愛が、自然とハミルトンに偏っていく様はだれの目にも明らかでした。 そして勃発する、アロンソvsハミルトンの醜いトラブル。 作戦を遂行しないハミルトンに腹を立てたアロンソが、ピットに居座ってハミルトンの予選を妨害する事件が起こり、2人の仲の亀裂は救いようのないものになってしまいます。 しかも、この事件で、アロンソは、FIA(F1のルールをつかさどる裁判所のような団体)から、 予選順位降格のペナルティを受けてしまいます。 チームの対応にも腹を立てたアロンソ、ここで とんでもないことをしでかします。 つまり、 その当時マクラーレンが秘密裏に行っていた スパイ行為(フェラーリのマシン情報を盗んでいた)を、 FIAにバラす!と言ってロン・デニスを脅したのです。 そこで先手を打ったロンデニス、 バラされる前に自首してしまったため、 F1界を揺るがす、一大スキャンダルが表ざたになってしまいます。 マクラーレンがこのスパイ事件で被った被害は、 コンストラクターポイント全剥奪(つまりびりっけつチームになるってこと)と、 100億にものぼる莫大な罰金でした。 これにより、自身の立場まで窮地に立たされたロンデニス、 もはや、アロンソ憎しの心では、誰にも劣らない存在になってしまったのです。 こうしてアロンソとチームは一年もたたないうちに破局してしまいました。 そして、2007年チャンピオンシップはもつれにもつれ、 ついにはアロンソVSハミルトンの一騎打ちの様相を呈します。 そこでは、もはやアロンソを応援するチームではない、 アロンソvsハミルトン+ロンデニスの構造でした。 (実際ロンデニスは、「敵はアロンソ」と言い放ったくらい) そんな中迎えた最終戦、 ミスを犯したハミルトンの前に、 いきなり順位3位のライコネンが。 そのまま逆転タイトルをフェラーリ、キミ・ライコネンに奪われてしまいます。 シーズン通して圧倒的な強さを誇り、 つねにチャンピオンシップをリードしたチームの、 内側からの無残な崩壊でした。 そして、2008年。 アロンソは、マクラーレンを離れ、古巣ルノーへ復帰。 代わりに、ルノーのコヴァライネンがマクラーレンへ移籍しました。 そして、アロンソが愕然とするのは、 ルノーはもはや、アロンソが乗っていて勝ちまくっていた常勝集団とは似ても似つかぬ、 中段以降の遅いチームに変貌していたことでした。 そんな中、シーズンがスタートします。 今年こそは、向かうところ敵なし、と思われたフェラーリ、 ところがふたを開けて見ればマクラーレン強し。 ハミルトンの優勝で幕を開けました。 その後、マッサが調子よければライコネンにトラブル。 ライコネンが良いとマッサがクラッシュ。 という調子で、どちらにも絞りきれないまま、 いつになくノーポイントを記録する両ドライバーのフェラーリ。 一方ハミルトンも、 つねにチャンピオンシップではトップをキープしつつも、 たまにとんでもないミスや、ペナルティで、 取れるレースを落としたりしています。 ただし、つねに言われるのは、 2強4ドライバー。 予選でも決勝でも、 この4人の間に、 誰かが挟まるというのが2008年のスタイルになりつつありました。 そしてよく挟まることでポイントを稼いできたのが、 BMWの2人。ロベルトクビサと、ニックハイドフェルド。 つねに、2強の後ろはBMWが占める姿が、前半中見られました。 そして、このシーズンの最初で、 資金不足になった、佐藤琢磨を擁するスーパーアグリが、ついに参戦不能となって姿を消すという事件が起こりました。 さて。 このシーズンですっかり地を見せ始めたハミルトン。 傲慢な言い草が方々の怒りを買って、もはや アロンソだけじゃなく、周りのドライバーのやっかみ対象になっています。 (;´Д`) 仲が良いとされていたドライバーも、今では? チームとは相変わらずの蜜月状態で、 何をしてもチームがかばう姿は、「親バカマクラーレン」と苦笑されるほど。 まぁ、憎ったらしいほど強いので、しょうがないですね。 さてさて、にっくき元チームメイト すっかり忘れ去られそうな元王者アロンソですが、 今年に入っては、去年までの愚痴を封印し、チームに献身を続けています。 そして、チームメイトがまったく歯が立たないというのに、 ただ1人、2強+BMWの中に輪って入ろうと躍起になり、 アグレッシブなレーシングをしては、人々の感心を誘っています。 アロンソらしくないミスも多いですが、すべてはアグレッシブに攻めているゆえ。 遅いマシンを腕一本を頼りに必死で駆り、入賞する姿に、 さすがはチャンピオンと、人気が急上昇しています。(;´Д`) そして、ダメダメなフェラーリ。 マシンは速いのに、ドライバーも速いのに、 チームのミスでとんでもない取りこぼしをする、作戦で大失敗する、 ダメなチームと成り果てました。 ずっと競っていたハミルトン、ライコネンですが、 ライコネンに不慮のトラブルでノーポイントが続いたため、 ハミルトンとマッサに遅れを取り始め、 ついに、3戦残して、追いつけないほどの差をつけられます。 そして、マッサも。 4戦残して1ポイント差まで詰め寄り、予選ではポールポジションを取り、 逆転に王手をかけたシンガポールGP。 チームの給油ミスにより、最後尾へ。 そのままいいところなく失意のうちにレースを終え、ノーポイント。 チームメイトのライコネンも、クラッシュしてノーポイント。 チームとしては、最低最悪の結果で、 ハミルトンに大きく水を開けられてしまいました。 残る3戦、今年のタイトル争いが、ハミルトンに大幅に有利になりました。 現状、 ハミルトン 84 マッサ 77 クビサ 64 ライコネン 57 ハイドフェルド 51 コヴァライネン 51 アロンソ 38 ヴェッテル 27 トゥルーリ 26 グロック 20 ウェーバー 20 ロズベルグ 17 ピケ 13 バリチェロ 11 中嶋 9 クルサード 8 ブルデー 4 バトン 3 ちなみに、 チームどおしで、それぞれ競っているのは、 フェラーリvsマクラーレン。 3位は単独BMWに続き、 4位を争う、トヨタvsルノー。 トロロッソとレッドブルとウィリアムズが三つ巴で後に続いています。 ホンダは単独ビリから2番目。 いつになく、チャンピオンシップのトップのポイント数が低いことでも、 「おいおいおい~」と言われている年ですね。(;´Д`) また、 チャンピオンを争う皆さんが後半になって案外ぽかっとミスしてレースを失っているため、 史上まれに見る、いろんな人が優勝する年でもあります。(笑) (いつもは、特定の人、たとえばシューマッハかアロンソしか優勝しない、みたいな偏りがあるものですが) 今年優勝したのは、 ハミルトン、マッサ、ライコネン、コヴァライネン(初)、クビサ(初)、ヴェッテル(初)、アロンソ。 実に7人もの優勝者を出しています。これってめずらしーんです。 皇帝の支配した時代から、若手群雄割拠なF1新時代になったとも言えますね。 ちなみに、今季優勝数では、マッサの5回がトップ。 ハミルトンは4回、ライコネンは2回。 いかにフェラーリが、効率悪いかって事が分かりますね。(;´Д`) さて、次戦は、雨と霧で荒れることの多い富士スピードウェー日本GP。 ここを制してタイトルに王手をかけるか。ハミルトン。 いよいよエース制を復活させ、マッサに力を集中させて首の皮をつなぐか、フェラーリ!! ハミルトンが一回でもノーポイントを出せば、まだまだ可能性はあるので、 フェラーリ最後の挑戦が始まります!
by tmk72m
| 2008-09-30 19:16
| F1
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